はじめに
CMなどで見ていて、さすがにこれは行きたいな!と思い「五大浮世絵師展」に行ってきました。
いやぁ圧巻の展示と、浮世絵の世界を堪能できました。
本ブログでは、展示会でも説明がなかった、浮世絵の分業制の話など、実際に浮世絵展に行った時に話ができるようなウンチクも交えて皆さんに情報をお届けします!!
- 五大浮世絵師展の概要、見どころが分かる
- 五大浮世絵師展では語られていなかった、浮世絵の分業性について理解することができる
- 展示されている作品だけではなく、その背景など含めて浮世絵を見ることができ、作品の捉え方が一味違う深い形で鑑賞することができる
- 理想は、是非一緒に見に行った方や、見にいった感想のウンチクを語ってください(笑)
展覧会の概要

🖼 展覧会名:五大浮世絵師展―歌麿 写楽 北斎 広重 国芳
📍 場所:上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)
📅 会期:2025年5月27日(火)~7月6日(日)※休館日なし
🕙 時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
🎫 料金:一般2,000円、高校・専門・大学生1,500円、小・中学生800円、未就学児無料
🎧 音声ガイド:スマホ利用で無料(イヤホン持参推奨)

ちなみにこの音声ガイドですが、記載もされている通り無料なんです!
この手の音声ガイドは、基本的に有料のところが多いですが、無料で音声ガイドを聞けるのは嬉しいですよね。
しかも尾上松也さんのガイドが上手いのなんの。
所々、歌舞伎調の語り口になるのも含めて、かなり作品にのめり込むことが出来ました!
なので、スマホとイヤホンは必須で行かれた方がいいと思います。
五人の浮世絵師、それぞれの魅力
🎨 喜多川歌麿(きたがわ うたまろ)
美人画の代名詞。表情・仕草・髪の質感まで、繊細かつ色気たっぷり。


🎭 東洲斎写楽(とうしゅうさい しゃらく)
たった10ヶ月の活動ながら、表情の“誇張”で一世を風靡した役者絵の鬼才。


🌊 葛飾北斎(かつしか ほくさい)
あの「神奈川沖浪裏」で世界的に有名。「北斎ブルー」はここから生まれた。


🌉 歌川広重(うたがわ ひろしげ)
「東海道五十三次」や「名所江戸百景」など、旅と風景をロマンに変える達人。


🐲 歌川国芳(うたがわ くによし)
ユーモアと迫力の武者絵&擬人化。ポップカルチャー的センスが爆発。


各絵師それぞれに作品の違いがあり、また年代ごとにも作風が違ったりと、非常に楽しむことができました。
細かい色使いや線のタッチの繊細さなど、見ていて本当にどうやって作られたんだろうと??
そして、これこそが本ブログのポイントです!

浮世絵って分業制で作成されたって知っていましたか?
次項では、それについて詳しく説明しますね!
実は“分業制”だった!浮世絵制作のしくみ
実は、浮世絵の制作は、「絵師・彫師・摺師・版元」という4者による完全な分業制で行われており、まるで現代のプロジェクト制作のような精緻な仕組みでした。この辺りを知ることにより、より深く浮世絵について理解することが出来ると思います。以下に詳しく解説します。
🎨 1. 絵師(えし)
役割:原画の制作(デザイン)
- 画題(美人、風景、役者など)に応じて構図・線画を描く。
- 原稿(「下絵」や「清書絵」)を墨一色で描き、彫師に渡す。
- 有名な絵師:葛飾北斎、喜多川歌麿、歌川広重など。
現代で言えば、絵のアイデアと構図を生み出すクリエイティブディレクター
🔪 2. 彫師(ほりし)
役割:版木の彫刻(板彫職人)
- 絵師の原画を薄い和紙に写し取り、それを版木に貼って彫刻。
- 主線用の主版(墨板)と、色ごとの色板を作成。
- 線の太さやタッチを忠実に再現する高い技術が求められる。
髪の1本、まつげの先端まで彫る繊細な手技が光った
🖌 3. 摺師(すりし)
役割:紙に色を刷る(プリンティング職人)
- 色板ごとに色を載せ、何度も紙に重ねて刷っていく。
- 色の濃淡、グラデーション(ぼかし摺り)、きめ細かさが見どころ。
- 北斎ブルー(プルシアンブルー)など、発色と均一性の管理も担当。
後述しますが、葛飾北斎の『北斎ブルー』と言われていたブルーの美しさは、摺師の腕にかかっていたと言っても過言ではないと思います。
🧮 4. 版元(はんもと)
役割:プロデュース・資金管理・流通販売
- 企画立案から販売まで統括。いわば「浮世絵ビジネスのプロデューサー」。
- 絵師との契約、彫師・摺師の発注、流通手配などを担う。
- 蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)が特に有名。
大河でも放送されていますが、『蔦屋重三郎』は、まさに“ヒットメーカー”の名をほしいままにされていたんですね。
浮世絵は、なぜ分業制だったのか?
浮世絵版画が分業制になった主な理由は、効率的な大量生産と高い専門性を両立させるためと言われているようです。
大量生産の必要性
- 浮世絵は江戸時代の大衆文化として人気を博し、庶民でも手に入れられる安価な商品であることが求められたようです。また、木版画の技術によって同じ絵を何百枚も印刷できるようになり、需要に応えるためには大量生産が不可欠でした
- その為、分業制を導入することで、各工程を同時進行でき、制作スピードが格段に上がりました。これにより、浮世絵は短期間で大量に市場に供給できるようになりました
高度な専門性の分担
- 前述した通り、浮世絵の制作には、絵師(原画を描く)、彫師(版木を彫る)、摺師(紙に摺る)、そして版元(企画・販売)の4つの役割があり、それぞれが高度な専門技術を必要としました
- 例えば、彫師や摺師の中でもさらに細かく分業され、特に難しい部分は熟練の職人が担当し、その他の部分は弟子が担当するなど、作業の効率化と品質の向上が図られていたようです
コスト削減と価格の低下
- 分業による効率化でコストを抑えることができ、浮世絵の単価を下げることができました。これにより、浮世絵は一部の富裕層だけでなく、広く庶民にも普及しました
版元によるプロデュースと流行の反映
- 版元が現代の出版社のような役割を担い、どんな作品が売れるかを見極めて企画し、絵師・彫師・摺師に発注する仕組みでした。これにより、時代の流行やニーズを迅速に作品に反映できる体制が整いました
北斎ブルーは分業性が生んだ技?
展覧会の北斎のエリアでも何度か説明がされていた「北斎ブルー」。
ベロ藍/プルシアンブルーと呼ばれる鮮やかな青色は、見ていて吸い込まれるような、キレイな青色でした。
ベロ藍は18世紀初頭にドイツで発見された合成顔料で、江戸時代後期に日本に輸入され、北斎や広重らが積極的に用いました。
このベロ藍は、単に顔料として優れていただけでなく、和紙の特性と摺師の技術が組み合わさることで、浮世絵ならではの鮮やかな発色や濃淡、グラデーションが生み出されました。特に北斎の「神奈川沖浪裏」などでは、濃さの異なるベロ藍を巧みに重ね摺りし、波や空に立体感や広がりを与えています。
ここで私が思ったこと。
「いやぁ北斎って色使いがキレイで本当に素敵な浮世絵を書くなぁ」
ではないと思うんです。
勿論、北斎が当時流行りのベロ藍/プルシアンブルーを使って、独特の青を表現したい!
と、強い意志で摺師に伝えたのかもしれませんが、私は摺師の技量にも着目したいんでよね。
むしろ、北斎ブルーは、摺師(すりし)の高度な技術によって初めてその美しさが発揮された色なのではないかと。
摺師は、和紙の繊維に絵具をしっかりと摺り込む力加減や、ぼかしなどの表現技法を駆使して、北斎の意図を色彩として具現化しました。ベロ藍自体は水で溶くと非常に濃い色になりますが、摺師の手によって和紙に美しく発色するよう調整されていたのです。
つまり、「北斎ブルー」は北斎のデザインとベロ藍という新しい顔料、そして摺師の熟練した技術が三位一体となって生まれた色であり、摺師の腕がなければあの鮮やかな青は実現しなかったと言えるのではないでしょうか?
実際に浮世絵の工程の動画あるので、是非コチラも見てみてください。
まとめ
一つの芸術を見る中でも、色んな角度からその作品を見ることで、作品自体の深みも増しますし、捉え方の深みも増すと思います。
展覧会自体のクオリティが高く、展示している作品もよく知っているものも多数ありました。
特に尾上松也さんの音声ガイドは必聴!浮世絵を知らなくても、日本の美を体感する良い機会だと思うので、興味を持たれた方は是非行ってみてください!!



我が家は、この展覧会をキッカケに美術鑑賞にハマりそうだよね?



本当にそう!芸術は見るだけじゃなく、深く考えることが出来るのがいいし、それを語り合えるのも面白いよね!
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