前作、「成瀬は天下を取りにいく」から1年。満を持した続編になります。
(前作「成瀬は天下を取りにいく」の書籍感想は以下)

前回も物凄く面白かったですが、成瀬が大学生になり今まで以上の成長を感じたり、成瀬を取り巻く人々の話も多岐に渡ったりと、更にパワーアップして帰ってきました!
さぁあなたも成瀬ワールドにドハマリしちゃってください。
書籍情報
- 書名:成瀬は信じた道をいく
- 著者:宮島未奈
- 出版社:新潮社
- 発売年:2024年
- ジャンル:文芸作品・青春・成長
- ページ数:208ページ
内容概要:
成瀬の熱心なファンである小学生、娘の受験を心配する父親、近所でクレーマーをしてしまう主婦、観光大使を目指す女子大生など、多彩な面々が登場し、それぞれが抱える等身大の悩みや不安と、成瀬あかりという存在との対比が、この作品の大きな魅力となっています。
こんな人におすすめ:
- 日々、複雑な思考をされている方(シンプルな思考の重要さに気付かされます)
- 人間関係の機微さを楽しめる方
- 小説を楽しく読みたい方
まっすぐ正直に生きるということ
前作から引き続き、成瀬はまっすぐである。
それが今作では、様々な相手との対比で、より成瀬のまっすぐさが際立っていると思います。
成瀬ファンの小学生「北川 みらい」のシーンでは、相手が子供であっても成瀬は真剣に向き合います。大人目線の「上から」ではなく、一人の人間として同じ高さで話をする。その姿勢にまず惹かれました。
また、京大受験の際「城山 友樹」と出会い、心配だからと自宅にまで連れてくる。そして面白いのが、城山のポリシーを尊重して、関与するのは必要最低限。ご飯を一緒に食べたり、お風呂に入れたりするわけではなく、ただ相手の主張を聞いてあげて、良い意味でそれ以上のことはしない。お節介過ぎない点も成瀬も非常に印象的でした。
クレーマーの「呉間 言実」とのやり取りについても、偏見を持たず、その指摘を「ありがたい」と受け止める。そして、その観察眼を買い、万引き犯を捕まえる協力を依頼するシーンは、成瀬の度量の大きさを感じさせます。
(いや、なんで店長目線やねん!笑。というのは置いていて)
「びわ湖大津観光大使」に成瀬と共に任命された女子大生「篠原 かれん」には、相手が本当に好きなことを尊重する姿。撮り鉄のことを「素晴らしい」と肯定する場面は、相手を丸ごと受け止める彼女の純粋さを象徴していました。
自分もこうなれたらいいなと思わせてくれる
成瀬の生き方は、あまりにもまっすぐで純粋です。
でも実際は、誰もが抱える「しがらみ」を気にせずに生きることこそ大切なんだと気づかされました。
彼女の行動は突拍子もないことが多いですが、実は極めてシンプルです。
だからこそ純粋に面白いではなく、少し嫉妬というか、そうシンプルに生きれていない自分がもどかしく感じるということも感じました。
自分もこうなれたらいいな。そういう気持ちにさせてくれるのが成瀬の、この小説の凄さだと思います。
見返りを求めない姿勢
成瀬は、いつだって成瀬でした。
おそらく普通の人だったら、自分が周りにどんな影響を与えているかを察することができると思います。
そして、自分は影響力の強い人だ。そう自覚することで、どこかでそう言った言動が生まれてくると思います。
ただ、成瀬は違います。
究極言うと、もしかしたらそんな事すらも気付いていないのかもしれませんが、決して偉ぶることもなく、ずっと成瀬のまま。それがまた人を惹きつける。
傲慢さがなくずっと純粋な子供のような生き方だから、さらに人を魅了するのだと思います。
心に残った一言
「先のことはわからないからなんとも言えないが・・・・・・。何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」
引用:『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈
当たり前ですが、色んなことをやってきた成瀬が言う言葉だから、説得力が全く違います。
何かになるのは、何かをやった先の結果でしかないのかもしれません。
事実、大津を盛り上げたいから観光大使をやることになる成瀬。
観光大使になることを目的としていた「篠原 かれん」とは違い、終始当たり前のように、観光大使の服に身を包み色んなところに出向く。
つまり、観光大使は一つの要素でしかなく、やりたいことである大津を盛り上げることを徹底的におこなっていたんだと思います。
まとめ
前作も物凄く面白かったですが、今作も両親の登場や、成瀬の失踪など見所満載でした。
その中でも、成瀬の人としてまっすぐな生き方に影響を受ける部分は多々ありました。
人生はきっとそんなに複雑じゃなくて、今、自分が何をやりたいか?という問いにシンプルな回答を返していく、そんな連続なのかもしれないと思いました。

成瀬の言動に心を動かされる人は多いと思いますが、是非それを実際の行動に結びつけたいですね!
そして何より次回作が楽しみで楽しみで仕方ありません。
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